福田和代「繭の季節が始まる」

21世紀初頭のパンデミックを経験して、人類は《繭》と呼ばれる制度を導入。
新型ウィルスが発見されると、警察官や消防官、医療従事者などの一部の職種を除いて、収束までの間、外出は原則禁止となる。
交番勤務の警察官、水瀬アキオは猫型警察ロボットの相棒、咲良(さくら)とともに《繭》の町で様々な事件に遭遇する。


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言うまでもなくこの数年の状況から着想を得た近未来ミステリ。
人工知能や通信技術の進歩は描かれるものの、《繭》システムに反抗する陰謀論者がいたり、自営業者や中小企業の苦境、引きこもり生活からくる鬱や家族間での衝突などなど、そこにあるのはやっぱり「今」の情景。
起きる事件もどれも《繭》ならではで、パンデミック系日常ミステリという感じ。

小説としては、口は悪いけど有能なロボット猫の咲良のキャラがいい。
犬型じゃなく猫型としたのは、多少市民に強圧的な態度をとっても許されてしまうからかな、というのは僕の推測笑
そんな咲良とアキオの憎まれ口をぶつけあいながらの信頼関係、絆の深さがとてもいい感じ。