時雨沢恵一「キノの旅/the Beatiful World」

旅人キノの訪れたその国は、入国許可から宿の手配、サービスにいたるまでが機械化され、人間の気配がまったくなかった。
それでも、ひとつの国に3日は滞在するという自分に課したルールに従い、愛車エルメスを駆って国民の姿をさがしたキノは、やがて森の中の居住エリアでようやくひとりの男性に出会う。

言葉を解する二輪車エルメスを相棒に世界を旅するキノの物語。
もう現代の古典といってもいい有名作で、僕もあちこちで評価を聞いてはいたのだけど、今回がこの作者自体初読。

アンチユートピア・ロードノベルとでもいうのか、キノの訪れる様々な法律や制度、慣習を持った国のありさまが主軸。
最初から明確な悪意を持ってそうしたのでもなく、ひとつの理想を目指して始まったはずの制度が結局は国を衰退させていく。
ガリバー旅行記」的風刺小説としても読み解けそう。

表紙からもっと西部劇みたいなガンアクション的なのを想像もしたのだけど、それはわりとあっさり目。
簡潔な描写ともあいまってそこが物足りない人もいるかもだけど、僕はあんまりアクション多めは苦手なので、ちょうど良かった。
キノのキャラは個人的にかなりツボで、エルメスとのやりとりなんかもいい味。