劉慈欣「三体Ⅲ/死神永生」
三体世界による侵略が認識された危機紀元の初頭。
肺がんのために余命わずかとなった雲天明(ユン・ティエンミン)は、思いがけない大金を手に入れ、国連主催のオークションで太陽系外の恒星を購入、学生時代に想いを寄せた程心(チェン・シン)にプレゼントしようと思い立つ。
一方の程心は国連惑星防衛理事会戦略情報会議(PIA)に所属、迫りくる三体艦隊へ探査機を送り込もうという「楷悌計画」に参画していた。
4光年を隔てた三体艦隊へ向けて、探査機を光速の1%まで加速させるため、彼女のアイディアが採用されたことで、計画の中枢に関わり、そして人類の未来を大きく左右することに。
「三体」三部作完結編。
この手のシリーズものの後の方の巻というのは、先行作のネタバレ避けて話すのが難しい(訳者あとがきで大森望氏もそのへん苦慮されてて微苦笑)。
それでも、冷凍睡眠と覚醒を重ねて、地球人類にとって激動の数世紀を生きる、そして時に自分自身の決断で地球の、太陽系の命運を動かしてしまう新主人公の程心の、数奇というには過酷な人生は、それだけでも読みごたえあり。
この巻だけでも壮大なSF大河ストーリーなんだけど、シリーズ通して見ると、これまで数光年を隔てての駆け引き、戦略構想や技術論なんかが多かったのが、三体世界と地球文明のかなり直接的な干渉が描かれ出して、ついにここまで来たかという感じ。
三体世界を代表するアンドロイドの智子(ともこ)がとても印象的なキャラ。
程心の相棒になる艾AA(アイ・エーエー)、PIAでの程心の上官、トマス・ウェイド、宇宙論研究家の関一帆(グァン・イーファン)、前作の主人公でもある羅輯(ルオ・ジー)ら、脇の登場人物たちも多才。
ここに来てそんなもの出してくるかという驚き、何が正しくて何が間違っているか、最後の最後まで二転三転の、間違いなく大傑作。