陳楸帆「荒潮」
中国南東部の硅(シリコン)島。
羅(ルオ)、陳(チェン)、林(リン)の「御三家」が強い影響力で支配する故郷の島に、米企業の経営コンサルタントの通訳として帰ってきた陳開宗(カイゾン)は、町で不良少年に襲われていた少女、米米(ミーミー)を助ける。
電子ゴミの中から再利用可能な資源を探しだして暮らす“ゴミ人”である彼女と開宗は次第に惹かれあうが、彼女にはある秘密があった。
中国発の近未来SF。
環境問題や経済格差、貧困、搾取などなど現代的な問題を取り扱っていて、それだけに序盤はSF的設定も出てくるだけの現代小説みたいに読めてしまう。
SFとして動き出すのは中盤過ぎ以降なんだけど、そうなるとスピーディな急展開を見せる。
登場人物のそれぞれに背景があって、悪役側もただそれだけでない深みがある。
中国語の固有名詞や錯綜するストーリーに苦戦はしたものの、なかなかに引き込まれた。