古野まほろ「叶うならば殺してほしい/ハイイロノツバサ」

 

吉祥寺の一軒家で火災が発生。
火元と見られる二階の一室からは17歳の少女を含む3人の遺体と、瀕死の男性ひとりが発見される。
現場の状況は少女監禁、虐待の様相を呈していたため、重大事件に発展。
唯一自力で脱出した生存者である17歳の少年、二科徹は被疑者として逮捕されるが、警察に対して黙秘を貫く。


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ラノベ風美少女キャラの特殊設定系と、本作のような組織の詳細な描写を盛り込んだ警察小説と、だいたいふたつの作風に分けられる作者。
略歴を見ると実際警視庁勤務経験を持つキャリア官僚だったそうで、誇張脚色はあるにしてもきっとリアルなんだろうと思う。
むしろ、ゴスロリファッションの管理官、箱﨑(はこざき)ひかり警視や、その片腕になる水鳥薙警部補のキャラが妙に浮いてる感。

 

陰湿な虐待描写、残酷描写なんかもあって、誰にでもおすすめという話じゃないんだけど、そこを耐え抜いて最後まで読むと紡がれるのは、凄絶な因果、悲愴な覚悟、いびつではあっても美しくさえある純愛の物語。
真相がわかってハッピーエンドというタイプのミステリじゃないし、個人的にもラストにもやっとするものはあったんだけど、深く刺さってくる本。