有栖川有栖「双頭の悪魔」
有栖川有栖「双頭の悪魔」
夏の事件(「孤島パズル」)で受けた受けたショックを抱え、長い旅にでかけた有馬麻里亜(マリア)。
思わぬなりゆきから、ある資産家が山奥の廃村を買い取って立ち上げた芸術家たちの里、木更村に長逗留することになる。
一方で娘を案じた父親の要請を受けて、江神二郎、有栖川有栖(アリス)ら英都大学ミステリ研究会の面々も木更村を目指すが、同宿となったスクープ記者、相原直樹の仲間と誤解され、立ち入りを拒絶されてしまう。
強行手段に訴え、あっさり発見されてしまったものの、ただひとり江神はマリアと接触、木更村住人たちの理解を得ることにも成功する。
しかし、そんな矢先、現在の木更村当主である木更菊乃と婚約を発表したばかりの画家、小野博樹が壁画作成に取り組んでいた鍾乳洞の奥で殺害される。
菊乃の意向で警察への通報は2日遅らされ、その間に住人たち自身の手で殺害犯をつきとめる試みがなされることになる。
さらにおりからの豪雨で村の唯一の出口である橋が破壊され、木更村は陸の孤島と化してしまう。
一方、隣村の夏森村に残されたアリス、望月、織田の3人も、相原記者の殺害事件に遭遇する。
再読。
綾辻行人「館」シリーズと並んで、僕のミステリ好きの原点にもなっている、有栖川有栖の江神二郎シリーズ(学生アリスシリーズ)の3作目。
陸の孤島と化した山奥の村の内外で事件が展開する、スケールも構成も申し分のない力作。
もっと前作「孤島パズル」のショックを引きずってるような印象だったマリアが、けっこう生き生きとワトスン役をつとめているのが意外でもあり、楽しくもあった。
シリーズの探偵役、江神を欠きながらのアリスたち1、2年生トリオの奮闘も良い。