エラリー・クイーン「フォックス家の殺人」

戦場で九死に一生を得、英雄として故郷ライツヴィルへ戻ったデイヴィー・フォックスだったが、戦場で神経を病み、さらに12年前の事件の記憶に苦しめられる。
12年前、母ジェシが毒殺され、父ベイヤード・フォックスが逮捕され、終身刑に処されていた。
父は本当に母を手にかけたのか。
自分は殺人犯の父の血を継いでいるのか。


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「災厄の町」に続く架空の町ライツヴィルもののシリーズ第2作。
現在でいうPTSDを扱っていたり、文学的にも評価が高いというだけあって、ふたつのフォックス家の人間模様は読みごたえあり。
「災厄の町」や以前読んだ「10日間の不思議」もそうだったけど、ライツヴィルものは家族の物語というテーマで一貫している感じ。

 

ミステリとしては、12年前の事件の再捜査ということで、服役囚であるベイヤードその人はじめ当時の関係者への聞き取りが主になって、展開がやや単調と感じるところもあった。
それでも中盤くらいから急展開、終盤にさしかかった頃に、前作の登場人物がある重要な手がかりをもたらすところなんかは息を飲んだ。
悲しすぎる真相とそれでも希望を感じさせるラストは前作同様。