有栖川有栖「女王国の城」

有栖川有栖「女王国の城」

 

宇宙から来る啓示者ペリパリを待望する人類協会。

怪しげな新興宗教のようにも、UFOオタクの集まりのようにも言われながら、若き代表、野坂公子(きみこ)のアイドル的人気もあって、急成長を続けている。

そんな組織へひとり向かった江神二郎部長を案じ、有栖川有栖ら英都大学推理小説研究会の面々もその聖地神倉(かみくら)へ。

 

多少の押し問答はあったものの、アリスたちもその城へ迎え入れられ、江神とも再会を果たすのだったが、やがて連続殺人が発生。

なぜかかたくなに警察への通報を拒む協会員たちをいぶかしみながら、彼らとともに3つの事件の謎に取り組むことに。

 

再読。

作者のデビュー作になる「月光ゲーム」から始まる、江神二郎シリーズの長編4作目。

前作から15年あけて2007年の刊だけど、作中は平成元年の1989年、携帯電話もなく、インターネットはまだまだ一部の研究者やマニアのもの、バブル崩壊が進行形で語られたりもする。

令和になった今読むと、どうしてもレトロなところもあるかも。

 

それでも、アリスと江神部長、望月、織田、マリアの、推理研の面々のやりとりが軽妙で、何かというと始まるミステリ談義、SF、映画、漫画の話なんかも楽しく読める。 特に前作では悩みを抱えていたマリアが楽しげで、時に無鉄砲なことまでしでかすのもいい。

 

ミステリとしてはシリーズ定番の、隔絶状況で事件が起こる、クローズドサークルもの。

吹雪や嵐でなく、何かを隠しているらしい協会幹部らによって本部内にとどめられてしまい、そんな信用できるかどうかはっきりしない人々と協力したり、対立したり、無茶な逃走を試みたり、のサスペンスが読みどころ。

ちょっと読書量落ちてたところだったんだけど、これは再読ということあって、13時間強の分量を楽しく読めた。