アンナ・ツィマ「シブヤで目覚めて」

村上春樹がきっかけで日本文化に傾倒し、大学でも日本学を専攻するヤナ
図書館の蔵書整理中に見かけた日本の無名作家、川下清丸のことを知り、優秀だが変わり者の大学院生、クリーマの助けも借りて、研究に乗り出す。

 

一方で渋谷には、もうひとりのヤナがいた。
誰からも姿を見られず、会話もできず、渋谷を離れようとしても駅のハチ公像前に引き戻されてしまう。

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チェコプラハで寡作の日本人作家を調査するヤナと、渋谷をさまようヤナ、そこにヤナが翻訳を進める川下の短編小説の内容も挿入されて、ちょっと複雑な構成。
ストーリーの方も、ふたりのヤナの関係、渋谷のヤナはどうなってしまうのか、数本の短編と随筆だけ残した川下の謎、ヤナとクリーマと日本人青年アキラの三角関係と錯綜する。

学園青春もの、幻想小説、歴史ミステリ、と多様な要素の入り組んだ読み味で、話がどこへ向かうのか分かるまで入り込みづらかったというのはあるんだけど、中~終盤にかけてぐっと面白くなった。

村上、芥川、太宰、菊池貫、黒澤明と、お馴染みの名前も出てきたり、チェコの日本ファン、研究者の様子なんかも興味深い。